年の途中で退職した年のふるさと納税の上限は、退職した月までに受け取った給与で決まります。退職金(一時金)と失業給付は、上限の計算に入れません。翌年に収入がなければ、上限はほとんど残りません。
「退職したから寄付は無理」と決めつける必要はありませんが、前の年の源泉徴収票を見て同じ額を寄付すると、上限を超えて自己負担が増えます。この記事は、退職に特有の3点(退職金・年末調整がない年の申告・翌年の住民税)に絞って、国税庁・総務省・自治体の説明で確認できたことだけを書きます。年収が下がった年全般の考え方は収入が減った年の限度額を先に読んでおくと流れがつかめます。
💡 退職月までの給与見込みを出したら、控除上限シミュレーターに年収と家族構成を入れて目安を確かめてください。
退職した年と翌年は「別の年」として計算する
上限は、寄付をする年の1月1日から12月31日までの収入で決まります。寄付した年の収入は、寄付する時点ではまだ確定していません(大津市の説明)。だから前年の源泉徴収票から目安を立てる仕組みなのですが、退職した年は前年と収入の形が大きく変わるため、この目安が使えなくなります。
寄付の控除は、次のように2つの年にまたがって効きます。
| 年 | 収入の中身 | その年の寄付が効く先 |
|---|---|---|
| 退職した年(例:2026年) | 退職月までの給与 | 所得税は2026年分、住民税は2027年度 |
| 退職した翌年(例:2027年) | 無職なら0円、再就職なら働いた月数分 | 所得税は2027年分、住民税は2028年度 |
所得税の控除は寄付した年分から、住民税の控除は寄付した翌年度の分から行われます(大津市、総務省)。住民税から引ける額には、住民税所得割額の2割という天井があります。収入が小さい年は、この天井が低くなります。
退職した年の上限は「退職月までの給与」で決まる
退職の月までに受け取った給与と賞与の合計が、その年の給与収入です。年末に再就職しない限り、この金額は退職日にほぼ確定します。つまり、退職した年は「年末まで収入が読めない」という普通の年より、上限を正確に出しやすい年でもあります。
たとえば、前年の年収が600万円で、2026年6月末に退職して1〜6月の給与が300万円だった独身の人を考えます。2026年分の当サイトの試算(基礎控除引き上げでの上限の変化の表)では、次のようになります。
| 前年(フルで勤務) | 退職した年(6月末退職) | |
|---|---|---|
| 給与収入 | 600万円 | 300万円 |
| 上限の目安(独身・2026年分) | 77,000円 | 28,000円 |
前年と同じ77,000円を寄付すると、約49,000円は上限を超え、控除されないまま自己負担になります。
ただし、この表は「1年分の給与が300万円の人」の計算です。半年で300万円もらった人は、社会保険料の払い方や賞与の入り方が違うので、数千円単位でずれます。正確に知りたいときは、源泉徴収票または最後の給与明細の「支給額の累計」「社会保険料の累計」をシミュレーターに入れてください。
寄付額を決める前に手元に集める数字は、退職日までの給与・賞与と社会保険料の累計、それに扶養している家族の有無です。退職金の額や失業給付の額は、上限の計算には使いません。退職後に1か月以上空いて落ち着いたころ、最後の給与明細が手元にそろった時点が、寄付額を決めやすいタイミングです。
退職月までに寄付をすでにしている場合は、その合計額も一緒に並べてください。合計が計算した上限を超えていれば、年内にこれ以上の寄付は足さず、超えた分は自己負担になると割り切るしかありません。
年内に再就職する場合は事情が変わります。同じ年に再就職すると、新しい勤め先が前の勤め先の給与も含めて年末調整をするのが原則で、上限も両方を合算した年収で考えます(国税庁 No.1910)。再就職しなかった場合の上限が最小値なので、再就職すれば上限は増える側にしか動きません。再就職が決まっていないなら、最小の場合(退職月までの給与だけ)で寄付額を決めておけば、超過の心配がありません。
退職金は原則として上限に入らない
退職金は、上限の計算に入れません。八王子市は「退職所得は、支払いを受ける年に源泉分離課税で課税が完結する仕組みのため、上限の計算に使う所得割額には含まれない」という趣旨で、原則として影響しないと案内しています(八王子市)。
分離課税とは、給与などとは合算せず、退職金だけ別枠で税額を計算する課税方式です。国税庁の説明では、退職所得は次の式で計算します。
退職所得 =(退職金の額 − 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額は、勤続20年までは1年あたり40万円(最低80万円)、20年を超える分は1年あたり70万円が加わります。たとえば勤続20年で退職金が1,500万円なら、退職所得控除は800万円で、退職所得は(1,500万円 − 800万円)× 1/2 = 350万円です。一定の場合は計算が変わるため、自分の勤続年数や退職の事情が当てはまるかは国税庁のNo.1420で確認してください。
ここで間違えやすいのは、「退職金が入ったから上限が増えた」と考えて寄付額を上げてしまうことです。給与にかかる所得税・住民税の計算とは別の枠なので、寄付できる額は増えません。
例外が2つあります。八王子市は、次のような場合は支払い年に源泉分離課税が行われないため、上限に影響する可能性があるとしています。
- 所得税の源泉徴収義務がない事業所から受け取る退職所得
- 退職金を受け取る年の1月1日時点で、国内に住所がない場合
該当しそうなら、お住まいの市区町村の住民税の窓口に問い合わせてください。
失業給付は非課税なので年収に足さない
雇用保険の基本手当(失業給付)は、課税されません。国税庁は、求職者給付は雇用保険法第12条の規定により課税されないと説明しています(国税庁 確定申告書等作成コーナー。令和3年分の記載なので、申告する年分の最新情報も確認してください)。
課税されない給付は、所得に含まれず、上限の計算にも使いません。無職の期間に失業給付を受けていても、その年の収入は「退職月までの給与」だけとして計算します。失業給付が入ったから大丈夫、という感覚で寄付額を決めると、上限を超えます。
